「~百発百中の火縄銃~」 (光秀・藤孝の丹後攻略~その3~岩滝 弓木城)  ~名言地産地消(24)~

「~百発百中の火縄銃~」
(光秀・藤孝の丹後攻略~その3~岩滝 弓木城) 
~名言地産地消(24)~

丹後は多くの名士を輩出した。その名言を今丹後に暮らす我々が地産地消していこう。

細川藤孝、弓木城での戦について報告を受ける。
「籠城組の中にただ一人、恐ろしく鉄砲の上手がおりまして、その鉄砲一つに意気地なく射すくめられ、進むことが叶いませんでした。-(略)-。雑兵を捕えてききましたところ、その鉄砲撃ちは稲富治介という名で、眼かくしのままでも鳥を狙い落し、十間先に糸より下がった小豆を撃ち落とすと答えました。」

「火の縄」 松本清張著/講談社 初版1963年 より引用

この岩滝弓木城の戦いにて、鉄砲名人の丹後人、稲富治介(後の稲富伊賀守一夢)が世に出てきます。治介は細川忠興、ガラシャに仕え、後は徳川家康の元で稲富流砲術の始祖となります。そして、あの大作家松本清張が治介を主人公に「火の縄」という歴史小説を残しています。今ではすっかり埋もれてしましたが、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の放映を期に、稲富伊賀守の名と小説「火の縄」も是非知っていただきたいです。

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大内峠 天橋立一文字観付近 (弓木城の裏山)

藤孝は宮津、田辺の領地を得たが、奥三郡(中郡、竹野郡、熊野郡)を治める一色一族とは緊張状態が続いていた。光秀と藤孝は藤孝の娘お菊を、敵の領主一色義俊に嫁入りさせる融和策を採った。

だがこれには裏があり、当時嫁をもらうと親元に挨拶にいく”婿入り”の儀があり、その期に義俊を討ち取るという計略であった。この計略は義俊も解っていて、藤孝の再三の”婿入り”の要望にはなにか言い訳をしてこれに応じなかった。

天正十年二月、織田信長より書状が届く。「明智、細川、一色の三家、今もって不和の趣き・・・・急ぎ同道にて上京あるべし。もし上意に叛き上京なきにおいては大軍を差し向け誅伐有るべし」

でも、信長の前に出れば、婿入りしない不義を理由に切腹を言われる、でも行かなければ信長の大軍が押し寄せてくる。

義俊は、同道の話に乗り、田辺城に入った上で細川藤孝、忠興に父義道の仇を討ち、自害することを考えた。後のことを叔父の義清にまかせ、田辺城へと向かった。

だが、義俊の思いは叶わず、討ち取られる。そして、のろしを合図にすでに配置をしていた細川軍が弓木城へ押し寄せる。お菊の奪還をはかる。

弓木城は岩滝の南西に位置し(現在の岩滝小学校付近)、大内峠の峰から突き出した小高い丘にあった。

寄せ手が登ろうとするが、城から撃ちだす鉄砲の音が響くたびに、侍がのけ反り転げていった。稲富治介である。百発百中で敵を射止めている。しかたなく寄せ手は退却することとなった。

 ※「丹後の国盗り物語」中江忠弘著/石川特殊特急出版社 及び 「権現山物語」峰山町文化財保護研究会 より引用

 ※義俊誘殺は本能寺の変後の9月説もあるが、信長の威光を使った可能性が高い見て、ここでは2月説を採用している。

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弓木城跡 正面

義俊を誘殺する場面、ここでは詳細に書かなかったが、小説「火の縄」ではさすが松本清張、サスペンス劇場の殺人現場のような迫力のあるシーンを描いています。

この小説では、義俊を討ち取るのは、酒の酌をして飲もうとする瞬間を狙えと討ち手に指示する場面がある。この瞬間は両手が盃にあるため、すぐに刀を抜けないからだと言う。

無作法者の私にはこれが理解出来なかった。調べると公式に酒を飲むと時は両手で盃を持つとのこと。今でも目上の人につがれる時は両手で盃を持たないと失礼だと、今更ながら学んだ次第です。

でも、最近の宴会では日本酒を飲む人は一人いるかいないかぐらいで、その人は決まってマイペースで手酌を楽しんでおられる。酌をする隙がない。大半は生ビール、ハイボール、酎ハイのジョッキで、酌をするのは唯一ノンアルコールビールという状況です。昔とはすっかり変わってしまいました。

画像の説明
 弓木城跡 砦部

この小説では治介が百発百中の理由として、訓練以外に、鉄砲に治介なりの細工があったと技術者の側面も出しています。火縄銃は丸い鉄の玉を火薬で吹き飛ばすだけで、現在の弾丸を回転させて飛ばすのに比べて命中率は極めて悪い。治介は試行錯誤で今のライフルの旋条のような、丸い鉄に回転をかける工夫を考えついたのかもしれません。

戦国時代、鉄砲隊が大きな存在となってくるのですが、鉄砲の撃手は足軽あつかいとされてました。侍は鉄砲以外の武芸百般の習得が必要でした。ただ、どんなに武芸百般に秀でた侍でも、仕えた殿の運、不運で生き残っていけるか解りません。治介のような一芸に秀でた専門家のほうが生き抜けているのです。

これって、現代の会社での総合職に対して、IT技術者などの専門職の台頭の話によく似ています。「火の縄」は古い小説ですが、大作家松本清張は現代を予言していたのでしょうか。それとも現代が乱世の世の中に戻ってしまったのしょうか。

  

とにかく、「サスペンスドラマは大好きだけど、大河ドラマはちょっと苦手」と言ってらっしゃる女性の皆様。松本清張の小説「火の縄」がおすすめです。(友木)

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