「夜明け前の学校」 (松本重太郎~その2~丁稚奉公) ~名言地産地消(39)~

「夜明け前の学校」

(松本重太郎~その2~丁稚奉公)

~名言地産地消(39)

丹後は多くの名士を輩出した。その名言を今丹後に暮らす我々が地産地消していこう。

松本重太郎氏:

十歳にして赤貧から志を持って家を出。銀行、鉄道、紡績、ビール会社など次々と創業し、”西の渋沢栄一”と言われ関西実業界の帝王として名をはせる。(「気張る男」 城山三郎著/文藝春秋 表紙より)。京丹後市丹後町間人出身。

  

重太郎少年は、京の五条通りにある呉服商、”菱屋”で丁稚奉公を始める。まじめによく働き主人や番頭に気に入られるが、この店は限られた織物をなじみ客に渡すだけの商いしかなく、下働きばかりの毎日で、学校に通うことも叶わなかった。

三年たったころ、大阪の大店”綿利”(わたり)に移ることとなった。ここでは取引も多く、番頭や手代の見習うことから商いを学んでいくことができた。そして、近くにある、大丸や三井の番頭も通う、評判のいい儒学塾に仕事触りない時間で通うことを許されたのである。しかし、当時は番頭も丁稚も朝が明けるころから沈むまで働いていたので、塾に通えるのは夜明け前(午前4時頃)であった。

それでも、重太郎少年は”気張る”のである

「子供のころから重太郎は、毎日、明けの六つ刻(午前六時)、きまって神棚に手を合わせ、声に出して祈っていた。

 「おらが大きうなったら、間人一えらいもんになれますように」

 その程度の祈りでも、しかし、近所の人には馬鹿にされた。

 「われみたいな者が、何になれるんだや。ふん」

 これに対し、重太郎の返す言葉は一つしかなかった。

 「まあ、見とれや」

 一方、父の亀右衛門だけが、きびしい顔で励ましてくれた。

 「勉強せいや。長男でないものは勉強せな生きていけんのや」

 そのおかげで、綿利に移ってからは、夜明けの塾通いに加えて、夜は夜で行燈の下で遅くまで復習を忘れなかった。」

「気張る男」 城山三郎著/文藝春秋 より引用しています。

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NHK大河ドラマ「晴天を衝け」でも、青年渋沢栄一が近くの尾高淳忠の私塾に通うところが前半描かれていた。そして、その私塾の娘と渋沢栄一は結婚することとなる。よく描かれていたため当時の私塾の雰囲気を垣間見ることが出来た。

重太郎少年は儒学の塾に通ったのですが、これは「商人は徳をもて」ということで、商人向けの儒学塾を江戸幕府が奨励していたのであった。また、儒学だけでなく、世間事情や商いの手紙の書き方など、実用的なことも教えていたようである。大阪では商人の学びは盛んで、”懐徳堂”という大阪大学の前身となった有名な私塾があり、その流れの塾に重太郎少年は通い出したと思われる。今であれば、有名私大の夜間の商学部に中学生が入ったようなものである。最初は理解確認のため先生の質問にも的外れな回答だったようで、夜も復習しないとついていけなかったのかもしれません。

また、幕末の頃、儒学でも陽明学が盛んになる。陽明学では、

「心のままに、自分の責任で行動する」

ことを尊しとしている。

渋沢栄一も陽明学を学び大きな影響を受けたとされている。NHK大河ドラマ「晴天を衝け」でも、人と衝突しても自分信じることを、自分の責任で行動していく姿がよく描かれている。そして西の松本重太郎も「潔い生涯」と後世から評価される人生を歩んでいくこととなる。

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松本重太郎氏の丁稚奉公時代を読んで、同じ京丹後市出身の野村克也氏と重なるように感じた。

野村克也氏はプロのテストを受ける前に、峰山高校工業化学科と縁のあるカネボウの内定をもらっていた。プロのテストがダメでも、入団してすぐに解雇されても、カネボウに入社し野球をやって将来野球の指導者になるという目標を立てていたのである。南海入団時から、プロの世界の野球をとにかく学んでやろういう姿勢が、シンキングベースボール、ID野球につながり、野村克也氏を名選手、名監督にしていったのです。

松本重太郎氏が「間人一えらいもんになる」と言っていたのは、地位が”えらい”のではなく、”えらい”といわれる先生、つまり”商いの指導者”になろうしていたのではないかと思えるのです。そうであれば、間人で土地なくても、打ち上げれた貝のようなことはない。そして、その目標が、単に金儲けした商人に終わらず、西の渋沢栄一と評される、関西経済会の重鎮に押し上げていったと思えてしかたないのです。(友木)

 

松本重太郎ギャラリー 京丹後市丹後町間人にオープン!

https://www.city.kyotango.lg.jp/material/files/group/1/20210927_jjj001.pdf

今年の夏大阪で開かれた、松本重太郎展の様子もご一覧ください。

特別展示「大阪から日本の産業革命を切り拓いた起業家 松本重太郎展」|大阪商工会議所セミナー・イベント
大阪商工会議所のセミナー・イベント等を掲載しています。

https://www.osaka.cci.or.jp

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