アニメーション背景画 風景画 特別展 @まちまち案内所  〜 リラクゼーション丹後(19) ~

アニメーション背景画 風景画 特別展 @まちまち案内所

〜リラクゼーション丹後(19)~

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アニメーション映画の背景画、美術の展示会は都心の美術館の夏休み企画として、よく開催されどこも大人気です。ならば丹後でもと思い、まちまち案内所(まちまち案内所 - ホーム | Facebook)の本棚にて、画集や図録の展示という形で開催します。本棚というほんの小さなスペースですが、多くの絵を見ることが出来、興味深い解説を読むことができます。是非ご家族で御覧ください。

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こういった本を収集してきたのは、アニメーション映画の背景画、美術は里や里山の風景が素晴らしく描かれているからです。特にスタジオジブリ作品の背景画は素晴らしく、美術監督の男鹿和雄、井岡雅宏、山本二三の画集または作品別ART BOOKを今回出品しています。高畑勲監督は男鹿さん画集の中で背景画について次のように語っています。

「身近な自然は、夏の旺盛な繁茂と晩秋の盛大な落葉以外、申し訳ないほど慎ましく、出しゃばることはありません。人間の尺度からすればとてつもなく大きいのに、豊かだのに、長生きだのに、年毎に鮮やかに生まれ変わるのに、慎ましいのです。

里や山の風景のたたずまいは、長い時間をかけて人々が働きかけたせいでしょうか、その木その草その土その水はすべてすべて自然そのものだのに、こんなにも人に馴染んで、やさしく心をなごませ楽しませ、日々の感謝を受けとめてくれます。

昔からの家を支えてきた材木やそこに暮らす人々は逆に、風雨や日差しにさらされて年々自然に馴染み、自然みたいな姿になってきます。

ひとつひとつの植物や事物がひとつひとつ慎ましく際立つわけではないけれど溶け合ってしまうのではなく、ひとつひとつ生きてそこにある。そしてそれらが毅然一体となって慎ましいままでどんなに魅力的であるか。そんな山や里や人のたたずまいのすべてをくるんで、日光や雨や雪や雲や風や空がどんなに心躍る彩りの魔法を演出してくれるか。そしてその慎ましさが、アニメーション映画のなかで結果としてどんなに雄弁な力を発揮するか。それを男鹿さんは、『となりのトトロ』『おもひでぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』など作品で可能な限り示してくれました。

かくべつ主人公づらをしていたわけではなかったのに、里や山の風景が結局これらの作品の根源的な主人公だったことを、見てくれた多くの人が見抜きました。そしてそれは、そうあってくれることを望んでした宮崎駿や私にとってほんとうに嬉しいことでした。」

「男鹿和雄画集」 監督高畑勲 寄稿文/スタジオジブリ出版部 より引用

そういえば、スタジオジブリの作品では“おばあちゃん”が重要な役としてよく出てきます。たしかに背景画の世界と毅然一体となっていたし、主人公と関係を深めていくにつれて主人公も背景画と毅然一体となっていく演出があったかのかもしれません。また、「となりのトトロ」では“まっくろくろすけ”なるもののけが登場してきます。これも家の木材も“ひとつひとつ生きてそこにある”という演出だったのかしれません。とにかく、何度見てもまた新しい発見があって面白いです。

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アニメーション美術の評判の高い監督として新海誠監督が上げられます。特に名作「君の名は。」はデジタル処理技術を駆使して、アニメーション美術の最先端を切り開いたとして評価されています。新海監督はインタビューの中で次のように語っています。

東京に暮す少年と山深い田舎町に暮す少女の入れ替わりによって、風景の鮮やかコントラストが生まれていることについて

「最初に『入れ替わりでいこう』と決めたとき、美術にも強い意味を持たされるかもしれないと思ったことを覚えています。瀧は三葉の身体を通じて、三葉は瀧の身体を通じて、相手が普段取り囲まれている風景を見る。そのことによって相手に惹かれていくという話ですから、美しい美術というものが物語のテーマの上でも必然的に大きな位置を占めるだろう。それならば自分たちがこれまでこだわってきた風景描写を最大限活かすことができる、と。」

風景が忘れてしまった相手の居場所を探るヒントになったことについて

「自分自身の構成している取り換えようのない、逃れようない部分が風景にまつわるなにかであることは間違いないと思います。そういう人間がつくると、こういう物語が出来上がるというのが、『君の名は。』だったと思います。」

新海誠展図録 新海誠監督インタビュー/朝日新聞社 より引用

確かに、里に暮す女の子と仲間との会話のシーンでは殺風景な背景でしたが、東京に暮す男の子が、体が入れ替わって見る里はとっても素敵に描かれていました。生まれ育った里の景色は取り換えようがないのですが、つまらないと見える里の風景も「そんなことはないよ。素晴らしいよ。そう見ようとしないと里は無くなってしまうよ」というメッセージだったのかもしれません。

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風景画としては、超リアルな風景画集「神業の風景画-ホキ美術館コレクション」を出展しています。「これ写真だろう」としか思えない絵ばかりです。いや、むしろ写真を超えたリアリティがあって、マラソンランナーの高橋尚子さん、この美術館の絵を見て、「この絵の中で走りたい!」と言ったとのことです。

これとは全く逆に、アメリカの農園暮らしをほのぼのとしたタッチで描いた「グランマ・モーゼス展図録」を出展しました。グランマ・モーゼス(モーゼスおばあちゃん)は70才から絵を始めて、101才まで描き続けた人で、アメリカでは豊かなシニアライフ、豊な田舎暮らしの象徴となっています。この展覧会、行ってみたら結構人が入っていました。そんな暮らしに憧れている人が日本でも多いのかもしれません。(友木)

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